問題
弁護士の登録を受けていないファイナンシャル・プランナーが、資産管理の相談に来た顧客の求めに応じ、有償で、当該顧客を委任者とする任意後見契約の受任者となることは、弁護士法に抵触する。
1 正しい
2 誤り
解答 2 誤り
任意後見契約とは?
まず、任意後見契約について簡単に説明します。これは、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ信頼できる人に財産管理や生活に関する事務を委ねておく契約です。この委ねられた人を「任意後見人」といいます。
例えるなら、将来病気などで入院して、お金の管理や必要な手続きができなくなった時のために、信頼できる家族や友人に代わりにそれらをお願いしておく約束のようなものです。
弁護士法との関係
弁護士法は、弁護士以外が報酬を得て法律事務を行うことを禁じています。ここで重要なのは「法律事務」という部分です。具体的には、
訴訟代理(裁判で代理人として活動すること)
法律相談(法律的なアドバイスをすること)
法律文書の作成(契約書や遺言書などを作成すること)
などが含まれます。
任意後見契約と法律事務
任意後見契約に基づく業務は、財産管理や身上監護など、多岐に渡ります。その中で、法律事務に該当する行為が含まれる場合、弁護士資格がない人が報酬を得て行うと弁護士法に抵触する可能性があります。
例えば、
訴訟代理: 任意後見人が、本人(判断能力が不十分になった人)を代理して裁判を起こしたり、裁判に対応したりすることは、弁護士でなければ行うことができません。もし弁護士資格のない任意後見人が報酬を得てこれを行うと、弁護士法違反となります。
法律相談: 任意後見の範囲を超えて、法律的な判断が必要な場面で、弁護士資格のない任意後見人が報酬を得て法律相談を行うことも、弁護士法違反となります。
しかし、全ての任意後見業務が弁護士法に抵触するわけではありません。例えば、日常的な預貯金の管理や、生活に必要な物品の購入などは、法律事務には該当しないと考えられています。
ファイナンシャルプランナーの場合
ファイナンシャルプランナーは、資産運用や保険、税金など、お金に関する幅広い知識を持っていますが、法律の専門家ではありません。したがって、任意後見契約の受任者となることはできますが、その業務範囲には注意が必要です。
例えば、
OKな例: 日常的な財産管理(預貯金の出し入れ、公共料金の支払いなど)を行うことは、問題ありません。
NGな例: 本人を代理して裁判を起こす、複雑な法律問題について判断しアドバイスする、といった行為を有償で行うと、弁護士法に抵触する可能性があります。
実社会での例
例えば、ある高齢者が将来判断能力が低下した場合に備えて、ファイナンシャルプランナーと任意後見契約を結んだとします。その高齢者の預貯金を管理し、生活費を支払うことは問題ありません。しかし、もしその高齢者が遺産相続で親族と揉めて裁判になった場合、そのファイナンシャルプランナーが報酬を得て裁判の代理人を務めることはできません。別途弁護士に依頼する必要があります。
まとめ
弁護士の登録を受けていないファイナンシャルプランナーが、有償で任意後見契約の受任者となること自体は、直ちに弁護士法に抵触するわけではありません。しかし、任意後見業務の中で法律事務に該当する行為を有償で行うと、弁護士法に抵触する可能性があります。そのため、ファイナンシャルプランナーは、自身の業務範囲を明確に理解し、必要に応じて弁護士と連携することが重要です。

